2011-12-24

何もない、じゃなくて。


カブールに来て約4週間。

この間、友人の紹介などで(いざ聞いてみると知り合いがアフガニスタンで働いているよという友人が結構いるものだ。)、この国で働く何人もの外国人に会う機会があった。日本人だけでなく、アメリカ人、イギリス人、オーストラリア人等々。彼らはたいてい国連機関か自国政府関連機関、あるいは軍に勤務している。オフィスも住居も厳重な警備で守られ、外出は極度に制限され、仮に外に出る場合は防弾車で移動する。食料・日用品は誰かに買ってきてもらうか、所定のスーパーマーケットで20分間の時間制限付きで済ませる。そして、6週間に一度などの間隔でリフレッシュ休暇が与えられ、アフガニスタン国外で約1週間過ごす。

私の置かれた状況といえば、大違い。
小さなベンチャー企業のたった一人の現地駐在員。社内の誰も、アフガニスタン(あるいは他の危険地域・紛争地域)での生活を知らない。最初は移動するにも車がなかったし(防弾車どころではない)、自分が食べるものは自分で調達しなければならない。ゼロからのスタートに
「うーん、私には何もない」「こんな状態で大丈夫だろうか」
と思わずにいられない。周りからも心配される。しかも予算もないので、高額に設定された外国人向けの各種サービス(車、住居、保険、、、)など、とてもじゃないが手が出ない。

でも、モノは考えよう。
何もないおかげで、私は他の多くの外国人が見ることのないアフガニスタンを見ている。ジャーナリストの目に留まらないような、名もなき人達の日常に出会っている。

大小無数の電気屋が両側に軒を連ねる1本の通り。
厚さ20センチもの札束を持った両替商が1メートル間隔で立ち、一番奥の広場ではまるでシカゴ先物市場のように男たちがぎゅうぎゅう詰めに立って叫んで取引をしている、アフガニスタンの外国為替市場(モチロン非公式)。
中国製の衣類、はたまた中古の革靴(女性用ブーツは結構おしゃれで私も一足購入)が並ぶ青空市場。
古いけれど清潔感のある、商店街の一角の街の歯医者さん
ビリヤードを楽しむアフガニスタン軍の若者
ロシアのポップミュージックに合わせて踊るおじさんたち
私が外国人だと気づいて、よく来たわねー!と抱きしめキスしてくれたおばさん

中には、ここの通りのケバブ屋さんより、あっちの角のケバブ屋さんのほうがおいしい、とかいう他愛のない情報まで含まれるわけだが。

見方によっては恵まれない待遇。でも、モノの有る無しで優劣が決まるわけではない。どちらに価値があるかという問題でもないと思う。例えば国連で働く人が体験するアフガニスタンと、私が体験するアフガニスタンは、単純に違う。でもどちらもアフガニスタンであることに変わりない。

私の仕事は市場開拓。地元の人たちがどんな暮らしをしているのか、自分の目と耳と足で知らないことには始まらない。だから他の在アフガン外国人に比べていろんなものが不足しているような状態が、私には、却って好都合なのだ。

要は自分の目に入ってきたモノゴトから、何を受け止めるか。そこから何をするか。これからだ。



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