2011-01-04

SOPプロジェクト始動

前回書いたようにZiqitza Health Careには2つのサービスラインがあり、私は当面その一つ「108」(州政府とのPPPモデル)に専念することになりました。

同社は現在3つの州で州政府の救急車サービスを受託しています。驚くべきことに、これらすべて2010年に稼働したのです。すべての土地で、従業員を一から雇い、サービスを立ち上げました。ここまではとにかく立ち上げて軌道に乗せるのが精一杯だったのですが、少し落ち着いたこともあり、標準的な業務手順(Standard Operation Procedure)を整備することにすることになった次第です。オペレーションを標準化することで、各地での品質を担保するとともに、新規エリアでの迅速なサービス開始にも活かしたいとのニーズによるものです。

 3月半ばに控えたパンジャブ州でのサービス稼働に間に合わせるのが当面のターゲット。2月のトレーニングで新業務手順を周知していきます。12月は、その第1ステップとして、私が既存3拠点(ケララ州トリヴァンドラム、ビハール州パトナ、ラジャスタン州ジャイプール)を1週間ずつ訪問し、現状のオペレーションをヒアリングして回りました。ヒアリング対象は、コールセンター、救急車フィールドスタッフ/マネージャー、保守、(医薬品)在庫管理、医師、IT、人事、経理、財務等、主要機能をほとんど網羅。当プロジェクトは現在のところ、CEO直轄で、専任は私1名と手薄ですが、徐々に各部門と連携し、分担・協業していく予定。(そうでないととても無理!)

業務ヒアリング、業務設計・改善などのプロジェクトは、幸いコンサルティング会社勤務時に何度も経験しているため、業界・国は違えども、勝手が分かっていて取り掛かりやすいと感じました。また、フィールドアサインメント期間中の自分のテーマの一つとして、できるだけ多くの従業員に会うことを挙げていたので、個人的にも願ったり叶ったりのアサインメントになりました。

具体的なエピソード、気づきはこれからご紹介していこうと思います。お楽しみに。

トリヴァンドラムのオフィススタッフと。

 

2011-01-03

アキュメンファンド投資先:1298について

   NYで2か月間研修を受けた後、11月半ばからインド・ムンバイに拠点があるアキュメンファンドの投資先「1298」で働いています。ムンバイでの生活に慣れたかと思ったら、12月は8割方出張していて、なんだかあっという間に2か月が過ぎようとしていることに気づき驚いています。

1298が進出しているインド各地での体験には追々触れるとして、まず全体像をご紹介しておきます。

Ambulance for All を合言葉に、5人の起業家によって2004年に救急車2台で設立された営利企業。急速に規模を拡大し、現在従業員約1,500人、救急車は500台を目前にしています。

ちなみに、1298 (英語ではそのままOne two nine eightと読みます)というのは正式な会社名ではありません。この会社が使っている救急車の呼出し番号(日本だったら119)が1298なので、ブランディングの都合上、1298を多用しています。ただし、口述するように、1298番以外の番号でのサービスも始めているので、最近は正式社名Ziqitza Health Care Ltd.(ズィキッツァと読みます)を目にすることが増えてきました。

Ziqitzaの救急車サービスは大きく2つに分けられます。

1)単独民間事業・・・Dial 1298 for Ambulance

同社単体で民間事業として救急車サービスを提供。個人あるいは病院からの呼出しを受け、出動します。救命救急に限らず、転院等の緊急ではない患者の移動にも対応。(サービス名にEmergencyが入っていないことに注目。)有料制。特徴は価格体系。救急車のタイプによって2種類の価格があり、さらに患者の経済力によって2種類の価格が設定されています。(ALS: advanced life support, BLS: basic life support)


ALS
BLS
私立病院
      
      
公立病院
      
      
事故
無料

患者の経済力をどのように判断するか。これは、患者が指定する行先の病院が、私立であれば全額請求、公立であれば割引額を請求、という仕組み。インドでは公立病院は無料だがその分クオリティが悪く、お金に少しでも余裕のある人は私立病院を選ぶという事情を踏まえて設定されたとのこと。ちなみに事故の被害者は無料で搬送されます。

 現在はムンバイ市、ケララ州コーチン市で稼働しています。2008年11月26日のムンバイテロでは、1298の救急車がTajホテルにいち早くかけつけ、ホテル内から生存者を救出する様子がTVにも映っていました。


2)州政府とのPPP(官民連携)・・・Dial 108 in Emergency

インドでも徐々に州政府が救急車派遣体制を充実させようとしつつあります。中央政府から割り当てられるNational Rural Health Mission (NRHM)の予算を使っていることが多いようです。Ziqitzaもいくつかの州で入札を経て契約を勝ち取りました。(賄賂・汚職と戦う姿勢を貫く、といった意味で同社の姿勢は注目を浴びていたりもします。)

こちらは名前のとおり、Emergency(緊急)時のみの対応。1298で行っているような転院などの緊急以外の患者搬送は行っていません。呼出し番号は108。(政府だと3桁の番号が使えるんですね。)
救急車導入台数は州によってまちまちです。

州政府からの受託状況
稼働台数
サービス開始
ケララ州
(トリヴァンドラムのみ)
25台
2010年5月
ビハール州
55台
2010年9月
ラジャスタン州
189台
2010年7月
パンジャブ州
150台
2011月3月予定

どの州も今後さらに救急車を補充することを計画しているそうです。ラジャスタン州は2012年までに450台まで拡大すると表明しています。

さらにサービス体系も州政府が決めるため、州によって異なります。例えば、ビハール州では、利用者も費用を一部負担します。その他の3州では完全に無料です。また、救急車の装備にも若干の差があります。

州政府の契約を獲得するメリットは、(1)固定した収入源の確保、(2)自己資金による設備投資不要(契約による)、(3)農村部へのサービス提供が可能になる、といった点です。

もちろんこれですべてがバラ色になるわけではなく、苦労も伴います。(まず入札から契約に至る過程には大変な苦労がありそうですが、現時点では私はまだよく理解していないため、この件については別の機会にします。)まったくのゼロから一気に100台以上の運営を立ち上げなければならないし、政府相手の折衝や報告は労力を伴います。時間もかかります。一方で契約期間は2,3年のケースがほとんどのため、常にその先を気にしていなければならない。

オペレーションレベルでは、やはり人材育成が大きな課題です。救急車の運転手はトラックの運転手とは違います。人の命を預かる者として、高い倫理感と品質へのこだわりが求められます。ただ、みんながみんなそういう意識を持っているかというと、なかなか難しい。しかも遠隔地担当の救急車となれば、マネージャーが運転手らスタッフと直接顔を合わせる機会も限られます。この課題については、今後私も深くかかわることになりそうなので、引き続きレポートしたいと思います。

以上、まずは私が9か月間働くアキュメンの投資先「1298」の概要でした。

ムンバイで稼働中の救急車

ケララ州政府とのPPPによる108救急車。運転手、救命救急士と。

2010-12-31

NY研修後半まとめ

 ずいぶん時間が経ってしまいましたが、年を越す前に、ニューヨーク研修後半について振り返った文章を残しておきたいと思います。(言い訳ですが、書いたのはニューヨーク研修を終えた直後の11月半ばだったんですよ。。。)

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個人の内省を重視していた前半に比べ、ニューヨーク研修後半は、現場ですぐにでも役立つと思われる、実践的なスキルやツールの習得に力点が置かれた。習得の方法として、聴講形式ではなく、フェロー自身が(教室の外に出て)体験する中で学ぶ形式、及び講師とのフリースタイルでの対話といったスタイルが多用された。これらは私にとっては不慣れな手法だったため戸惑うこともあったが、文字通り体と心で直接感じたことは、深く私自身の内面に刻まれたと思う。特に私にとって大きな学びとなった2点を以下に挙げる。

      ストーリーテリング (Storytelling)
アキュメンではストーリーテリングが重視されており、我々フェローも複数の外部講師から手ほどきを受ける機会に恵まれた。Areal Groupによる「Leadership by presence」ワークショップでは、演劇の手法を取り入れて、(やや大げさに)演じるように物語を語る練習を繰り返した。詩人Rives氏、TEDキュレーターChris Anderson氏それぞれとのセッションでも、フェローが一人ずつ即興でストーリーを語り、講師と他のフェローがフィードバックするという形式だった。
これらは、今まであまり使ってこなかった「筋肉」を呼び覚ます体験だった。創造力・聴衆とつながる力・聴衆を惹きつける力等が潜在的には私にも備わっているのだと自信を持つ機会になった(本来誰にでも備わっているのだと思う)。
今後ストーリーテリングの能力を向上させるために心掛けたいのは、1)発声、2)個人的な体験を盛り込むこと。ワークショップを通して、発声は相手にとっての聞き取りやすさだけでなく、自信というポジティブ・フィードバックとなって私に返ってくると実感した。(発声をめぐる気づきはこちらのWebサイトに寄稿した。Rising PyramidBe the last one to define you.
また、個人的な体験を盛り込むことで、聴衆は話し手(私)に対して個人的・感情的なつながりを感じるようになる。演習を繰り返す中で、特に即興で語るとき、私には無意識のうちにこれを避けてしまう癖があることに気がついた。これは、ストーリーテリングの総仕上げ、ニューヨーク研修最終日Investors GatheringIG)での発表に際しても直面した壁だった。本番までの約2週間、CEOジャクリーンを始め、マネジメント層からスタッフまで複数のメンバーが私たちフェローのプレゼンテーションをレビューし、アドバイスする。その過程で、私を含むフェロー全員が繰り返し言われたのは、「Be more personal!
Personalになることは、研修前半で学んだ「無防備になる力」(Be vulnerable)にも共通する姿勢だと思う。IGに向けて準備する中で、私は他のフェロー達とお互いのスピーチについて何度も語り合った。いくつものバージョンを書いては、ボツにした。私も、そして他のフェローも、普通だったら言わないような個人的な事柄をステージの上で言えたのは、互いの信頼とサポートがあったから。そして、本番でそうして自分をさらけだして、聴衆から得た共感、終わった後に人ごみをかき分け、歩み寄って、「共感した」「私も同じ悩みを持っていた」「応援している」と言ってくれる人が複数いたことに、さらなる勇気を得た。

      リーダーのロールモデル
研修後半は、現在「リーダー」として成功している方々と対話も多く設けられていた。Tom BarryCEO, Zephyr Management L.P.)、Bill Meyer(アスペン研究所名誉会長)、Carlos Dominguez (シスコ上級副社長)、Tim Brown (IDEO社長)Anthony Romero (Executive Director, American Civil Liberties Union)等、それぞれ非常に魅力的な人物である。彼らの生い立ちからキャリアの変遷、その中で「リーダーシップ」についての考えがどう生まれ、変容し、今に至ったか。非常に率直で、パーソナルな対話の中から、彼らのリーダーシップ哲学、スタイルを知り、翻って自らに問いかける時間となった。
自らのリーダーシップ能力を磨いていく上で、特に指針になると感じたのはBill Meyer氏の言葉である。「自分にはリーダーになる力があるのか?」「自分のどんな力が世の中の役に立つのか?」といった問い(悩み)はあったのですか、という我々の質問に、次のように答えてくれた。「誰にでも、子どもの頃から家庭・学校・職場など場所を問わず、無意識のうちに繰り返していて、得意で、好きな行動があるはず。僕の場合は、自分で答えを見つけること(Figure things out by myself)だった。それを繰り返していたら、いつのまにかどこに行ってもリーダーの役割をやることになっていた。(笑)」
確かにニューヨーク研修の初日から言われていたとおり、リーダーシップのスタイルは人それぞれ。周りと比べる必要もないし、自分らしさを抑える必要もない。むしろ、自分ができること且つやりたいことを、真摯にやり続ければ、結果は後からついてくる。フィールドに出るにあたって、結果を出さなければとの気負いがあったが、まずはそこから見直そうと思った言葉だった。

2か月間のニューヨーク研修は、たくさんの人と出会い、刺激を受け、自分自身を見つめ直した時間だった。自分を知り、自分の良いところも悪いところも受け入れ、広い視野で自分を受け入れることを学んだ。評価・判断することなしに、長所・短所・悩みなどすべてを含めた存在を受け入れて、建設的なフィードバックを与えてくれる仲間に出会えたのも、間違いなく一生の財産である。

2010-12-07

Not until I saw the difference...

Yes, I was sure 1298’s ambulance contributes to the life of people greatly when I first heard about their business.
Yes, I was impressed with the facility of the 1298 ambulance when I saw its ALS (Advanced Life Support) ambulance.
Yes, my heart was beating so fast and hard with the sense of mission when I sat on the front seat and ran through Mumbai’s busy streets.

But not until last week in Trivandrum did I truly realize the difference this company has brought to the society…

I spent a whole week in Trivandrum, Kerala, where Ziqitza Health Care Ltd. runs the public-private-partnership (PPP) model of emergency ambulance service. (The service there is known as “Dial 108” while the company’s private model is known as “Dial 1298”.)  Under the project name KEMP (Kerala Emergency Medical Service Project), the 108 ambulance service now operates 25 ambulances in the district of Trivandrum. The service is completely free to users. 

My mission there was to investigate every detail of operations in all the departments from control room to ambulance to finance. I will do the same for other 108 operations in Bihar and Rajasthan later this month and then work with department heads to improve and standardize the processes so that the company will be well fit for further scaling.

One day, I visited the largest hospital in Trivandrum, Medical College Hospital. I was waiting for our 108 ambulance by the emergency section of the hospital. It started raining. The place was getting crowded. But our ambulance has not come yet.

Other ambulances came, though. They are as big as ours, same white body with red and blue signs. Some are run by a private organization, others by hospital itself. I looked inside. I could not believe what I saw.

“It must not be an ambulance.”

That was the first thought.
Inside was literally empty. Nothing other than a metal frame (where a carrying board is placed – not even a stretcher!), bench, and a small sink! Where are medical equipments? Where are cabinets for storing medicine, mask, glove, gauze and bandage?

From what I know in Japan, I took it for granted to have an emergency medical technician, medical equipment, some medicines and tools on ambulance. Otherwise how can I call it an ambulance?? But that moment I once again realized such service was not readily available here.

How do you feel if only an empty ambulance is available when your mother is at emergency?
How do you feel if the fully equipped ambulance comes instead?

Other ambulance


108 ambulance

 

2010-11-24

Meet my new neighborhood

OK, I expected Mumbai to be noisy...but not quite to the extent that I'm experiencing now.

View from my apartment
Santacruz is my home for next nine month. As I sit in my apartment on the fifth floor, with nice breeze coming in, I look down rikshaws constantly coming and going on the street, and I look up airplanes flying high into the sky from the airport nearby.



Well, let's add the sound effects here. 

It means I am sandwitched by roaring aircrafts and honking rikshaws continuously from 6 am to 3 am, if not 24 hours. To make best use of the environment, every morning before I leave for work, I decided to do voice training. However loud I become, I'm pretty sure I will not disturb any neighbors because I hardly hear hearing my own voice!

Despite the sound effects, I do love my neighborhood. 

The streets are filled with vegetable and fruits vendors. I buy tomato from this person, garlic from next, potato from next, and cauliflower and cabbage from yet next person. There's a buffalo milk shop nearby, too. The same man is always standing in front of a huge barrel of milk. Every other day, I stop by and ask him to give me a smallest scoop of milk. He silently nods, pours fresh milk into a tiny plastic bag, ties it very tightly, and hands it over to me with a smile.

Home-cooked food
from my neighbor
I don't know if it happens all over Mumbai, or all over India, but at least in my neighborhood, people are very open, frank, honest, and helpful. It does not matter if they speak English or not. In my building, families leave their doors open. So whenever I pass by, they say hi or wave hand and smile. In a shop, a lady customer, not a shop keeper, recommends me different brands of soaps to try. In a milk shop, another old lady customer told me to get curd, not milk, and make lassi at home. (I actually followed her advice and it was really good!)

In a big city, at least in Tokyo where I am from, people tend to be indifferent to one another. Some people try to take advantage of foreigners, or even those from the countryside in the same country. Those were the experiences I had in the past, which made me a little defensive this time, too. To my pleasant surprise, Mumbai has overthrown my presumption so far. I am curious how this metropolitan city can also keep local flavors. 

And my everyday adventure continues…

2010-11-23

Be The Last One To Define You

Today, my first ever guest post came on line at Rising Pyramid!

It is a reflection of one of the training sessions I had in New York.

Please take a look!!
http://risingpyramid.org/2010/11/22/be-the-last-one-to-define-you/

2010-11-19

Dear Mumbai .... and farewell to New York

On the last day of our NY training, ten of us - Acumen Fellows class of 2011 - read a letter to our respective placement city at the Acumen's annual Investors Gathering. (In my case, the letter starts with "Dear Mumbai ...")

For weeks, we worked on writing a letter - wrote one, read, scrap, wrote again... I'm sure each of us had at least 10 versions of the letter. We read our letter to each other, and shared feelings and feedback over and over again. These are the letters coming from the deepest place of our hearts.

On the stage, as I was listening for the last time to everyone else, I could not help but feel honored to be part of the group. What incredible individuals my fellow Fellows are!!



We spent everyday together for last 8 weeks, sharing deepest feelings which I myself have forgotten that I had. We come from very different places and experiences, yet we share so much passion, feelings, fears, and love.

Now, alone in Mumbai, I miss my 9 siblings (!?) and at the same time feel empowered as I think we are all in the process of exploring a new place and new work.

With all the gratitude to the Acumen community, friends, and Fellows!